コロナ禍での開催記録

 東京とびもの学会2020大会は新型コロナウイルス感染症の影響で当初予定の3月15日から7月19日へ延期して開催された。

 開催にあたって、各方面のご協力があってこそではありますが、この新型コロナウイルス感染症影響下で実施したことは、今後の小規模同人誌即売会開催への参考になるかもしれないと思い、ここに記録することにします。

 なお、あくまでこの文章は東京とびもの学会副会長である私の主観で書かれており、当学会の理念とは違う部分もありますが大会を開催するにはどうしたのかの記録と思っていただければ幸いです。また、今後の他イベント開催の参考になればそれはそれで開催した価値があったと思います。

大会を延期をするのか中止するのか…

 大会延期確定させるまでの対応と決めてからの対応です。

 会場である『ハイライフプラザいたばし』から、開催自粛の要請が出されます。全額返金も可能な開催日延期要請という状況が、今回の事の重さが現れています。東日本大震災の翌週に行われた2011大会でも開催中止は主催者都合になり、会場費の返還はないとの回答でしたので、今回のこの条件は国からの要請もあるとはいえ相当であることがわかります。

 まず、大会を延期した場合の空き日程を調べました。ハイライフプラザいたばしの空きだけではなく、他の同人誌即売会の日程がどうなっているかも調べて重ならない日程であるかどうかも重要でした。この段階ではまだ東京オリンピックも延期になっていませんでしたのでオリンピック期間中は会場が空いていても即売会はできないな、など複数の条件を満たす日程として7月19日の同会場を第一候補としました。

 次に、3月7日に当学会の幹部を招集し「開催中止」「開催延期」の判断を行いました。
 中止した場合と延期した場合の影響はもとより、参加費返金による財政の悪化はどうするのかなど色々あり当学会みたいな弱小団体からしてみたらそれはもう難しい判断を行わなければなりませんでした。
 最終判断は会長へ委ねましたが、延期日程の候補を調べておいたこともあり、7月19日への開催延期で決定しました。また、外部への告知は翌日8日に行うことも確認しました。

 解散後そのままハイライフプラザいたばしへ行き、開催延期を申請して7月19日を確定させます。この時点で3月15日の開催は正式に延期になりました。

 その足で郵便局へ向かい、案内状を送付している方へ延期のお知らせを発送するハガキを大量購入。当学会は年齢層も高めでもありますが、企業や研究所へ所属している方へは基本的に案内状を郵送しているので、WEBだけではない作業が相当残っているためです。

 この時期、長期単身赴任で群馬県某所のビジネスホテル物件に滞在していたので群馬まで戻る列車内で案内文面素案を作成。
 自室到着後にDTPで文章を起こして幹部回覧に出す。返答待ちの間にWEBページ更新準備を行い、こちらも回覧に出す。ハガキの文面確定後に印刷し、投函。出展参加者への案内メールを送信するためにWEBシステムを軽く改修して対応させる。

 翌8日、Twitterでの告知を行いWEBページ更新。この時点で開催延期の情報が表に出ることになる。反応としては、そうだよねという感じで比較的良好、というか、デスヨネーな雰囲気。
 告知後に出展参加者へのメール送信、関係各所への電話連絡を行う。郵送申込み出展参加者への案内も投函。

 3月9日、平日なので懇親会で手配していた飲料や仕出しのキャンセルを行う。同時に印刷所へパンフレットの納入停止と、全数破棄の指示を出す。こちら都合なので返金なしだが仕方なし。

 出展参加者への『延期参加/参加辞退』のアンケートシステムの開発開始。WEBページ自体はWordpressだが、受付システムやバックオフィスは、いわゆるLAMPでフルスクラッチ(このご時世おすすめしません、素直に統合環境とフレームワーク入れましょう)なので作るしかない。

 3月15日は、ハイライフプラザいたばしへ向かい、告知不足で来場してくる可能性があるために待機。宅配便の営業所へも向かい、搬入物の有無も確認しています。午後まで待機して会場を離脱。同日夜に参加可否アンケート稼働、出展参加者へ周知メール送信。

 ここまでで作業的には一段落。この後、世間的にはオリンピックが正式に延期になったりコミケットが中止になったり緊急事態宣言が出たり、契約更新できずに無職になったりとものすごい大変な時期が過ぎていきます。

再起動から準備し開催へ向けて

 延期はあくまで延期であって、作業はまだまだ残っているます。新型コロナウイルス感染症の状況は刻一刻と変わり、対応も追いかけになっているのでどうなるか予想がしずらい。緊急事態宣言が出されたので感染者数は落ちてきているが、いつまでこの状態が続くのかはわからない。順調に推移すれば7月19日は問題なく開催はできそうではあるので、それに向けて必要な準備を行う。

 再起動するにあたって、まず関係各所の指針やマニュアル、公開された案内や議事録など可能な限り集めて読み込む。ぶっちゃけこのままじゃ、いわゆる同人誌即売会やファンイベントは開催不可能だということがわかる。

 かといっていつまでも続くわけではない。規制解除の日程を確認すると、順調に対策が進み感染者数が下がれば条件付き開催は可能だということだ。その条件は

  • 会場収容人数の50%までの入場者数
  • ソーシャルディスタンスの確保
  • 手洗いや消毒などの徹底、換気の徹底
  • 飲食禁止
  • 参加者名簿の作成
  • 体調管理、当日の検温実施

 と、なかなか大変である。大規模イベントではちょっと現実的ではない。小規模であるからこそ工夫次第で開催できそうだな、という感触ではある。

 以下に当初予定していた配置図を掲載する。当大会は出展ブースの他に同一会場内にプレゼンテーションができる場所と見学席を作っているので、確実に密である。数年前まで同一会場内にあった、お宝展示場は場所の確保の都合で同建屋内1Fの会議室に移動しているが、こちらも密になるのは間違いないのである(詳細は大会サイトのFAQや概要を読んでください)。

3月15日の出展配置

 さて、新型コロナウイルス感染症対応配置はどうすれば実現できるのか。どこまで攻めてどこを守るのか。

 まず、ソーシャルディスタンスに必要な条件を考えてみる。

  1. 向かい合う場合は2mの距離を確保すること
  2. 横に並ぶ場合も2mの距離を確保をすること
  3. 待機列がある場合は最低1m間隔を確保すること
  4. 手洗い、消毒、個人情報確保、検温、パンフレット販売もソーシャルディスタンスを守った流れにすること

 と、それなりに高難易度とオペレーション要求である。

 まず、収容人数的にハイライフプラザいたばしは『設置によって最大500人』なのではあるが、そのときの受付の人によっては、”200人だから100人まで”とか言う人もいるし”最大250人”って言われたりとバラバラだったのでちょっと困った。結局は別日に別イベントを予約したときに申し込み用紙に『最大250人』と記入したことで確定したが、計画上は150人程度で収まるようにしたい。

 最初に中止にしたのは、プレゼンテーション部分である。聴衆席をソーシャルディスタンスを守って設置すると会場全体を使うことになり、本来の出展参加場所を潰すという状況になるため無理と判断。ある意味、大会の味付けとして必要なものではあるが仕方ない。

 次に、お宝展示もソーシャルディスタンスを守れないだろうと判断。展示物があったらそこの前で密になって話をするのが通例なので、どうにもできません。さらに展示物の中には触れるものもあるのだが、それを消毒できるのかというとほぼ不可能。密にならず触らずを回避するには、モノを置かないが一番であることからこちらも中止判断。毎回なんでこんなのがあるんだよって楽しみコンテンツなのだが、開催優先と考えると仕方ない。

 残ったのは出展参加、いわゆる即売会部分だけである。当大会では同人誌だけではなく色々雑多なので出展参加としている。

 ハイライフプラザいたばしはちょっと特殊環境で通常の同人誌即売会と大きく違うのは、会場の机サイズが『150cm(W)x45cm(D)』であること。コミケットなどいわゆる便利社机は180cm(W)x45cm(D)なのでちょっと小さい。さらに、当大会では出展参加者は展示物も多々あり大荷物の傾向があるので、1スペースは1机としてある。

 そこで、まず素案を作り最大だとどれだけの机を設置することが可能かを確かめるために図面を引いた。会場側からもらっている配置計画白図は正確な図にはなっていないので、実測含めて正確な数字になるように図面から起す必要があった。また消防法的に非常口への導線などもあるので、ほぼパズルである。

 まず、机が向かい合う通路は2m確保は絶対死守なので会場中央に通路を作成し、その左右に2m離れた形で机を並べる。出展参加者が着席する内側は背中合わせなので従来どおり150cmとする。

 通路側とは別に着席間隔も2m間隔にしなければならない。机の中央に椅子を配置すると、隣までの間隔は机1本分になるので、机と机の間を50cmにすれば2m間隔で着席することになるので、こちらも問題ない。

 壁に関しては、壁に向かっている場合は正面に出展参加者が居ないので通路幅1.8mでも問題ない。壁を背にすると、正面は出展参加者になるので、そこは通路幅2mを確保しなければならない。

 さらに、本部や受付、企業出展場所や音響設備などのスペースを計算に入れて最大出展数になるようにしたのが下記の図である。

7月19日の出展図面
机配置の詳細
実際に机を並べた会場

 会場内だけではなく、参加者全員が新型コロナウイルス感染症対策を行わなければならないため、入場導線を確定させなければなりません。

 入場するためには

  • マスクを着用
  • 手洗い
  • 手指を消毒
  • 参加者カードを記入
  • 検温
  • パンフレット頒布・受取

 の流れを確実に行わなければならない。そのため、会場入口付近からの直接入場させないために、ベルトパーテーションで空間を仕切り手洗いできるトイレ方向へ誘導している。トイレからは消毒液が設置してある机で手指消毒してから参加者カードを記入してもらう。その後非接触型体温計で検温後、数値をカードに記入する。検温はスタッフが行い、体温記入は別スタッフに口頭で伝えているので体温が問題ないかの確認も兼ねている。さらに机にサーモグラフィーを設置して体表面温度も計測しているので、トリプルチェックをしている。

 検温や参加カード記入はどうしても時間がかかるので、足元に1.5m間隔でSTOP札を設置していった。これはベルトパーテーション部分だけではなく、建屋入口のある1Fの専有できる部分まで設置した。

通路部分のベルトパーテーションで導線を明示
手指消毒コーナー
スタッフによる検温と参加カードチェック
入場時サーモグラフィーと出展参加者用QR Code参加システム

 出展者を入場させる前に、机や椅子、触るであろう場所を全てアルコール液で消毒した。

 ここまでやってやっと会場準備完了である。あとは出展参加者と一般参加者の対応である。

開催時間の運用

 出展参加者には参加申込時に最低限の個人情報を提出してもらっているが代表者だけなので、参加者全員の個人情報を得る必要があるため入場する者は全て参加者カードへの記入と検温を実施した。

 出展出席に関しては、事前に登録情報を元にQRコードを発行しておき当日はQRコードを読み取ることで参加出席確認とする運用にしていたため運営スタッフとの接触を最低限に。また手作業でチェックすることによる待機列ができることを時短により解消することができた。

 一般参加者に関しては、当大会の特徴として朝から来ない。いわゆる同人誌即売会では早朝からの列整理や入場時の誘導など必要だが、毎年ばらばらと来場し閉会までそれなりに人がいるという感じなので、この手洗いからの一連の流れが実行できた感じではある。これを同人誌即売会の入場列でやるとなると時間が相当かかるので実運用は無理だと思う。検温もサーモグラフィーでの一括確認しかないでしょう。一応、当大会でもサーモグラフィーは設置して監視していましたが、確実にひとりづつ検温が実施できていますのであくまで参考程度の運用となった。

 開催中は一定時間毎に公共部分のアルコール消毒を行った。更衣室に関しては利用者毎に消毒を行う予定ではあったが利用者が居なかったので未実施。
 同時に設置したアルコール液の残量をチェックし少なくなっていたら補充する、手洗いうがいを行う等予防に努める。

 会場内は想定通りの密度で推移し特に入場規制や入替えは行わなかった。当大会の来場者傾向に依る部分が大きいので人数が最大収容を超えるようであれば対応する必要はある。

閉会後の対応

 閉会後は出展者の撤収を確認後、全ての机や椅子、触ったであろう場所の消毒を行う。例年では懇親会を行うところだが、パーティ形式の軽食を伴うので中止とし事前にアナウンスしていたため特にトラブルもなく終了。

 会場担当者と返却確認を行い終了とする。

 翌日、回収した備品は全て消毒を行い整理。

 取得した参加者カードは大会開催4週間目まで保存、会場や保健所、医療機関等からの問合せがなかったことから破棄した。

今後に向けて

 来年の大会は予定通り3月に行う予定ではあるが、まだ未定である。
 会場の都合もあるが、新型コロナウイルス感染症がどういうことになっているか不透明なためでもある。開催できたとしても2019年開催規模に戻れるのか2020年開催規模になるのかはまだわからない。が、少なくとも2020年開催の実績と経験があることは貴重であると考えている。

 また、開催の参考にすべく他の即売会等の視察、意見交換などを行い改善点としたい。